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オレ的、911 GT3論。

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 僕はポルシェが好きだ——という話は前回のこのコラムで書いた。しかし、今回はそのポルシェに向かって敢えて一言もの申したい。

 そう、「ポルシェよ、お前もか!」——と。

 なーんて、ずいぶんと大げさな書き出しになってしまったのだけれども、ポルシェには一本筋の通った江戸っ子のような気質を常日頃から感じていて何よりそこに惹かれていただけに、今回目にしたニュースにはちょっとばかり落胆させられた。

 “ポルシェが911 GT3にカブリオレを追加”

 海外のスクープサイトでそんな見出しを目にしたときは、「レンシュポルト直系であるGT3にオープンのカブリオレだなんて、スピードスターならまだしも、硬派なポルシェ様がそんなこと考えるわけないっしょ!」と心底からのポルシェファンとしては軽く鼻で笑ってみたものだった。しかし、その後「2018年中のデビューが確定」というニュースをいくつかの自動車情報サイトで見るに至っては、どこか裏切られた気持ちとともに、なんとも言えない切なさを覚えた。

 GT3は言わずもがなの現行911シリーズの中で最もスパルタンな存在(GT2RSもいるけれどアレは飛び道具過ぎるのでここでは除外)である。レーシング直系、ポルシェで言うところの“レンシュポルト=RS”の正統後継車であり、事実、996世代以降の911レースカーには常にGT3R、GT3RSRといった具合に、“GT3”の名が誇らしげに冠されてきた。そう、GT3という存在は、世代を追うごとにラグジュアリーでコンフィーな“GTカー”として進化し続ける(そして大型化し複雑なグレードラインナップ構成を遂げていく一方の)911シリーズの中にあって唯一、ストイックで何よりダイレクトな走りを全面に打ち出した“硬派”であり続けてきたのである。

 991型になり、4ℓ 500psというスペックを手に入れたGT3は、自然吸気のフラット6としてはもはや限界の域(とはいえGT3 RSではさらに20ps増してるけれど)にまで達するそれはまさにリアルなスーパーカー(911の中で真にスーパーカーと呼べるのは、それまでターボのみだったと僕は思っている)となった。その突き抜けたパフォーマンスを完璧に使い切るにはもはやオールドスクールな3ペダルでは追いつかないという判断のもとに、潔く2ペダル+パドルシフトのPDKのみの設定とした辺りには、ポルシェが次世代に向けて謳う“速さの在り方”を、正直に見せられた気がした。

 991のGT3は実際、“オールマイティなスーパーカー”でもある。買い物からサーキットまで——まさに掛け値なしにそれができる。日常で使う限り、それは素のカレラとさほど差がなく快適であることにまず驚かされる。それでいていざ踏み込めば、素人ではそのすべてを引き出すことなど到底かなわないのだから恐ろしい。R35 GT-Rと同じく、いくらその気になって公道を攻めたところで、クルマの方が乗り手の腕の数段上の構えを見せ、そこからはもう一切破綻することない異次元の速さをただ見せつけられるのみ。さらには、より尖ったGT3 RSですら鼻唄まじりで街中を流せるのだから、現代版ポルシェ・レンシュポルトのその底なしの懐の深さには、慄くほかないのだ。乗りやすいから……と調子に乗った先には何かあったらもはや物理的には手に負えない速さの領域があるのみという、ある種ヴァーチャル的なデジタルエイジ特有の、それはどこかでリアリティを欠く狂気が、991のGT3には秘められている。

 しかし、それでもR35 GT-Rほど“無感情”な乗り味に徹していないところにはポルシェの美学を感じることもできる。“乗せられている”のではなく、あくまで“乗りこなす”という感覚は、ある。ニュルブルクリンクの周回タイムに象徴される数値至上主義が蔓延る昨今にあってなお、“操る歓び”“攻略する愉しさ”をきちんと備えたリアルスポーツであるところもまた、991 GT3の真の魅力であることは確かだ。

 996世代や997世代前半までの汗臭さはない。あくまでスマートに速い。極限の速さを的確にさばくためのPDKは街乗りでも効果を発揮し、免許取り立てのネエちゃんだって鼻くそほじりながら転がせる。それでも存分に“ファン”であるのだから現代版911最高峰の、その全方位的な完成度はつくづく素晴らしいと思う。ただその分、本当に美味しいところを引き出すためのスイートスポットは、恐ろしく狭くもあるのだけれど。だからはっきり言って、GT3のパフォーマンスを真に享受するという意味では、自分も含めた大半のクルマ好きにとって、991のGT3は単なる宝の持ち腐れでしかない。

 記念モデルの911Rや最近話題のGT3ツーリングで追加設定されたMTモデルには、個人的にはだから微妙な想いもある。実際に乗った人からは「いいんだけど、今となっては特段MTであることに説得力は感じない」との声を聞きもした。「911はMTじゃなきゃ」という良くも悪くもかなりオールドスクールな層に対してのポルシェからの誠意ある回答、といえば聞こえはいいけれど、ぶっちゃけ、「売れるんだから作っとこう」的な、どこかマーケティングありきの商売戦略という気がしてならない。

 そこにきて、冒頭のニュースである。実際にはポルシェが正式にアナウンスしている訳ではないのでガセネタの可能性もある。グッドウッドのFOSではポルシェ社の70周年を記念したGT3ベースの“スピードスター”も姿を見せているから、実はそっちが本命で991世代最後のモデルとして登場する可能性もある。しかし、個人的には最近の“なんでもござれ”のポルシェ(なんたって911だけで26グレードもあるんだよ!)なら、「売れる」と踏んだら平然とGT3にカブリオレを加えてくるのでは、と想像するのだ。

 実際、メルセデスAMGなんかはとっくのとうにCLK-DTMにカブリオレを設定(超限定数だけど)し、硬派なAMG GTRにもロードスターがある。フェラーリだってレーシングスペックを謳うスペチアーレにオープンモデルのアペルタを設定してる。そう、レーシング直系のマシンだからといって、いまどき真面目にサーキットに行って汗流しながらストイックに走る体育会系親父なんて絶滅危惧種に近いのである。それこそ「本気で走るならカップ買うし」というのが、世のお金持ちの本音なのである。

 しかし、それでもやっぱりポルシェだけには、「レンシュポルト直系は硬派であるべき」という姿勢を守り通してほしかった。最後の最後は愚直なまでに硬派であることこそが、ポルシェのいちばんの魅力だと、僕は今も信じているわけだから。

 だから今は俄然、中古マーケット的にもかなりお値打ちな996 GT3(しかも前期)が気になってしょうがない。形は大いに不人気だけれども、レンシュポルト直系の良い意味での汗臭さでは、今や最強のGT3だと思う。実際、街乗りもそれなりにハードだし、下手くそが飛ばすとしっかり怖い。そう考えると、GT3が時代の流れでどんどんストイックさを失っていく今、996 GT3という選択はかなりアリなのである。

 ん? 結局はそーいうオチ? というわけで鹿田パイセン、お手頃な996 GT3、探してくんさい。

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この記事の執筆者

高田 興平

高田 興平

Ko-hey Takada

モーターヘッド編集長

高田 興平の記事一覧>>

1974年式の43歳。寅年。職業は編集者。ジャンルレスなモーターカルチャー誌「モーターヘッド」&コレクター向けのハイエンド・カーライフ誌「Gentleman Drivers」の編集長を兼務。他にもイベント関係などアレコレ手がける浮気性(?)。既婚。愛車は1982年式のメルセデス・ベンツ500SL。

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高田 興平Ko-hey Takada

モーターヘッド編集長

1974年式の43歳。寅年。職業は編集者。ジャンルレスなモーターカルチャー誌「モーターヘッド」&コレクター向けのハイエンド・カーライフ誌「Gentleman Drivers」の編集長を兼務。他にもイベント関係などアレコレ手がける浮気性(?)。既婚。愛車は1982年式のメルセデス・ベンツ500SL。

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