
HONDA NS500⭐といえば、伝説のフレディ・スペンサーが生まれたマシン。
弱冠20歳のライダーが数々の偉業を成し、世界中の注目を集めたマシン。
このマシンを駆ったフレディ・スペンサーは1983年に世界最高峰ロードレースのシーズン制覇の最年少記録を樹立し、以後30年間その記録を破られることはなく、人々の記憶に深く刻まれました。
1977年、HONDAは10年以上の沈黙を破り、突然の世界GPへの復帰宣言をしました。
超高速回転型エンジンと250cc並みのサイズの車体を組み合わせたNR500を開発。これは「走る実験室」とも「前代未聞の大冒険」とも言われ、世界GPでの勝利までの道のりは険しいものでした。
NRの開発を進める一方で、「軽量でコンパクトな車体・ピークパワーで劣る分は全面投影面積の小ささと軽さで補う」ということをテーマに開発を進めた結果、【2ストロークV型3気筒エンジン】が選ばれ、それを活かしたコンパクトなフレームをまとったNS500が誕生しました。
このたびエスアンドカンパニーでは本田技研工業様よりこの伝説のマシンのレストア依頼をいただきました!

奥にあるゼッケン付きのバイクが例の・・・例の・・・・
NS500!!!!!!
40年以上の時を経て、今、目の前に☆彡
ご依頼内容は破損した外装パーツの補修と塗装で、作業内容は大きくわけると4行程です。
1. 現状の塗装をすべて剥がす
2. カウル等の割れ、タンクのへこみを補修して下地処理をする
3. 塗装と磨き
4. デカール貼付け
1. まずは塗装をすべて剝がしますが、その前に貼付されているステッカーの型取りをします。
これらのステッカーのデータは無いので、デザインデータを作るためにトレースします。
2. 次にカウル等の割れやタンクのへこみを補修していきます。
割れてしまったカウルなどの樹脂パーツはガラス繊維と樹脂で補修をし、強度を高めます。
補修個所はパテを盛り、ペーパーで削って表面を整えます。この作業は一度ではできず、何度も繰り返します。
そして、職人の手に伝わる感覚を頼りに滑らかな表面に仕上げていきます。
最終の塗装施工をするための塗料であるサフェーサを塗装して下地処理完了となります。
キズやへこみがあったとは思えないほど、滑らかになりました。どんなに塗装技術が高くても、下地処理が完璧でないと、塗装の密着不良や最終の仕上がりに影響します。
何度も繰り返す作業を丁寧に・・・魂をめいっぱい込めております!
3. いよいよ塗装の段階へ進みました。
まず初めに、すべてのパーツをホワイトで塗装し、組付けをします。
これでホワイトバイクの出来上がりです♪
全体のバランスや、完成イメージ図を見ながら、塗装作業をするためのラインを手作業で貼っていきます。本物と寸分の狂いなく、同じデザインになるように、何度も何度もマスキングし、貼り直しをします。
ラインが確定したら塗装作業へと進みます。色見本通りに調色した赤と青と黄色を塗っていきます。
カラー塗装の次は‘クリア塗装’です。クリア塗装施工により塗装の色と色の境目の段差をなくし、表面を滑らかに仕上げることができます。また、塗装が剥がれたり、劣化するのを防ぐ効果があります。もう、トゥルントゥルン♬♬
これで終了!と思いきや、この次は磨き作業に入ります。見た目はとても綺麗ですが、塗装施工の表面は細かな突起があるそうです。ワタシにはほぼ見えないんですけどね👀
その細かな突起を無くしていく作業です。
4. さて、最終段階のデカール貼付け作業です。
持ち込まれた車輛のデカールはNS500が最終使用された時の物でした。
今回は≪1983年初のシーズン制覇を果たしたNS500≫の再現がご要望でしたので、手元にないデカールは提供いただいた資料などを参考に製作しました。
大きすぎたり、小さかったり、色の濃さなど・・・何度も試行錯誤を経てすべてのデカールが揃いました。
微妙な貼付け位置、角度などを調整し、少しずつ少しずつ作業を進めていきます。
これまでの作業はすべて画像を基に、何度も確認しながら進めてきました。写真から伝わるその時代の空気さえも再現できるように、心を込めて作業にあたりました。
こちらのバイクは栃木県のホンダコレクションホールで展示される他、ヨーロッパやアメリカで開催されるイベントでは走行も予定されているそうです。
時を経て蘇り、そして今後数年にわたってたくさんのファンの方々に喜んでいただける仕事をさせていただけたこと、とても光栄です。ありがとうございました。
『これまでにのってきたバイクの中では、攻撃的に走れるスーパーバイクは結構好きだね。
CB750ベースのやつ。だけど、どれか一つを選べ、というなら、やっぱりNS500だな。
自分の能力に制限をかけてくることがない一番チャレンジングな存在だから。』
‘83年フレディ・スペンサー